鼻やのどの病気と歯並び

鼻やのどの病気と歯並び

口ポカーンは歯並びに影響することを知っていますか

  • 矯正治療をさまたげる口呼吸

鼻やのどの病気があると、口を開けて息をします。

本来、鼻で息をするものですが、口を半開きにして息をしている状態を

“口呼吸”と呼んでいます。近年多くの人がわかるように、口呼吸を

“口ポカーン”と呼ばれています。“鼻がつまれば、口で息をすればよいと

いうわけではない“のです。

なぜならば、口呼吸は歯並びや顔の成長に悪い影響を与えるからです。

口呼吸を続けていると、唇を閉じて前歯を外側から抑える機能がなくなります。

その結果、舌で前歯を押し出すくせ(舌のくせ)が出て、前歯を前方へ移動し、

“出っ歯”や上下の前歯が噛み合わない“開咬”になりやすいのです。

その上口呼吸は、矯正治療の歯の動きをさまたげ、矯正治療後の歯並びの安定

にも影響するのです。

 

  • 口呼吸の原因は、鼻やのどの病気

鼻やのどの病気などが、口呼吸の主な原因です。

  1. アデノイド(咽頭扁桃肥大)、口蓋扁桃の肥大
  2. 急性・慢性鼻炎、肥厚性鼻炎、アレルギー性鼻炎
  3. 鼻茸、副鼻腔炎その他、幼児期から指しゃぶりを小学生まで続けていると、口呼吸を引き起こすことがあります。
  4. “出っ歯”(上顎前突)や上下の前歯が咬み合わない“開咬”になり、

 

  • 扁桃肥大の影響は

扁桃肥大の害は、次のような症状があります。

  1. 扁桃が大きすぎると、鼻呼吸をさまたげる(口呼吸になる)
  2. 扁桃に溶連菌という細菌による巣ができて、腎炎、心内膜炎、心筋炎、
  3. 掌嚢胞症(皮膚炎)などが起きる
  4. 睡眠時の呼吸状態が苦しそうな呼吸、いびきをかく、息をつまらせる

 

  • 習慣性の口呼吸

鼻やのどの病気以外にあまり知られていないのですが、習慣で口を開けて息を

している人がいます。このような状態を“習慣性口呼吸”と呼んでいます。

習慣で口呼吸を続けていると“出っ歯(上顎前突)”、“開咬”や

“上下の前歯が前方に出ている”“上下顎前突”になりやすいのです。

前歯が出ている歯並びで、習慣性口呼吸が引き起こされている場合には、矯正治療

により歯並びが治ると口呼吸もなくなり、口も閉じられるようになります。

 

  • 口呼吸をしていると舌は下方に下がる(低位舌)

たえず口を開けて息をする習慣がつくと、口の中で舌の位置が下がってしまいます。

普段呼吸をする時は、“舌は上あごにつく”、“唇を閉じて鼻で息をする”を

心がけて下さい。飲み物や食べ物をのみ込む時、舌先は上あごにつけてのどの奥に

送り込みます。

口を開けた状態で、舌の位置が下がった状態は、“低位舌”と呼ばれています。

日中や夜寝ている時、口呼吸をして“低位舌”になると、口の周りや

顔の筋肉(表情筋)がゆるみます。口呼吸により絶えず口を開けている状態は、

他人からは“口もとがだらしなく”見えるのです。子どもの成長期に口呼吸が

続くと、歯並びや顔やあごの発育にわるい影響を与えます。

成人で“低位舌”になると、舌で前歯を押して出っ歯や前歯の間に間隙のある歯並び

(空隙歯列)になります。舌の訓練は、認知症の予防のためにも良いと言われています。

近年、歯科医や医師により、“よく噛むこと”と“舌の訓練”が健康に大事だと

言われています。

 

  • 鼻やのどの病気で口呼吸をしていると、次のような症状になりやすいのです。

✿歯並び・・・上下の歯列が狭くなる

✿舌の位置・・・低位舌になる。のみこみ方や発音がおかしくなる

睡眠時無呼吸(アデノイドや口蓋扁桃肥大)

✿顔の成長・・・間が抜けたような長い顔“アデノイド顔貌”になる

✿矯正治療・・・治療期間が長くなる。治療後の安定がわるい

✿その他・・・唇がカサカサになる。唾液が出にくい。口を開けていると外見がわるい

 

  • 鼻やのどの病気がある場合は、どうしたら良いか?

①耳鼻咽喉科医に相談する

“鼻がつまる”、“口を開けて息をする”、“いびきをかく”、“息をすする時に鼻をならす”

などの症状がみられます。このような症状は、鼻アレルギーや扁桃肥大(アデノイドや

口蓋扁桃肥大)、副鼻腔炎などの鼻やのどの病気で起きます。

②扁桃が小さくなる年齢まで待つ

③熱が出た時に薬をのむ

④手術をする

アデノイドは、子どもにとって健康上大きな問題ですので、耳鼻咽喉科医や私たち

矯正科医の意見を参考にして下さい。

参考文献:日本臨床矯正歯科医会 神奈川支部発行


上顎前突(じょうがくぜんとつ)(出っ歯)とは、どのような歯並び?

上顎前突(じょうがくぜんとつ)(出っ歯)とは、どのような歯並び?

  • ①上顎前突とは

上顎前突は、上の前歯や上あごが前方に出ている歯並びです。この歯並びは日本人に

多く、俗に、“出っ歯”や“反(そ)っ歯”と呼ばれています。

上の前歯や上あごが前方に出ていると、口元が突出して唇が閉じにくくなり口呼吸に

なります。無理に口を閉じると、あごの先に梅干し状のしわができて不満そうな表情に

なります。子どもでは、転んだ時に上の前歯を折りやすいことがあります。

また、大きく口を開けて笑った時に、上の前歯の歯ぐきが出て目立ちます。外国では、

このような症状を“ガミースマイル”と呼んでいます。

・ひと昔前の日本人の印象は・

ひと昔前の日本人と言えば、「出っ歯、細い目でメガネをかけカメラを首に下げて猫背」

と良い印象ではありませんでした。“ティファニーで朝食を”というオードリー・ヘップバーン主演の映画では、ミッキー・ルーニーが日本人の料理人を出っ歯でメガネをかけて

演じていました。

外国ではきれいな歯並びはステイタスですが、近頃の日本でも歯並びがわるい若者

(とくに成人女性)を見かけることが少なくなりました。本人や保護者も、就職、

結婚などの対人関係を意識しているのでしょう。

  • ②上顎前突の原因は

・幼児期の長期間にわたる指しゃぶり、食べ物や水をのみ込む時に舌で前歯を押す癖、

下唇を咬む癖などのわるい癖(幼稚園児や小学生)などで上の前歯を押し出す

・アレルギー性鼻炎、扁桃肥大などで口呼吸をする

・両親や祖父母の歯並びの遺伝がある

  • ③上顎前突の治療は

上顎前突は、その症状、年齢、協力度などにより治療法が異なります。

・低年齢(混合歯列)の場合(主に小学生)・

◆上あごの成長を抑えるために、取り外しのできる装置を使う

◆上あごの六歳臼歯に金属のバンドを接着し、学校からの帰宅後と夜(就寝時も)に

“ヘッドギアー”という装置をつける

◆後退している下あごを、前方へ成長させる“機能的矯正装置”を学校からの帰宅後と

夜(就寝時も)に使う

・永久歯が全て生えそろっている場合(中・高校生、成人)・

◆固定式の装置を使う

歯の表側にマルチブラケット装置(ブレース)をつけて、歯を動かしていきます。

金属の部品ではなく目立たないプラスチックやセラミックの部品をつけることも

できます。歯の表側の装置を望まない場合には、歯の裏側に装置をつけることも

できます(リンガルブラケット法という)。

上顎前突の治療は、あごの成長をコントロールできる年齢では早期治療をおこないます。

症状の程度や年齢により、非抜歯治療か抜歯治療かが決まります。例えば、永久歯が

全て生えそろった年齢で、上顎前突の症状が著しく、リラックスしている時に口元が出て

口が閉まらない場合には、上の前歯を後退させるためのスペースづくりとして、犬歯の

後ろの歯を抜く必要があります。

  • ④上顎前突の治療後は、このように変わる

✿出っ歯が治り、きれいな歯並びになる

✿口元が引っ込み、リラックスしている時にも口が閉じている

✿鼻で呼吸できるようになる(アレルギー性鼻炎、扁桃肥大がない場合)

✿人前で歯並びが気にならなくなり、自信になる

✿口呼吸が改善し歯肉の炎症が減少する

✿咬み合わせが良くなり、全身の健康につながる

  • ⑤治療開始時期は、まず矯正歯科医に相談を!

レントゲン等の資料を分析して年齢やその症状により“早期治療”を開始した方が良いか、

永久歯が生えそろった中学生以降に“本格矯正治療”が必要かを診断します。時期が早い

場合には、定期的にお呼びし、観察をおこないます。

矯正治療は開始するタイミングがありますので、素人判断せずに、まず矯正歯科医に

相談してください。

参考文献:日本臨床矯正歯科医会 神奈川支部


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