✿楽器の演奏と矯正歯科治療について
音楽は人生を豊かにするものであり、音楽を楽しむ中で、歌を歌ったり、楽器を演奏したりする人も多いと思います。しかし楽器の中には、演奏することによって、歯ならびが影響をうけることがあるといわれています。
歯ならびは、歯のまわりの舌、くちびる、ほほ、などの筋肉の力の影響をうけています。
それらの筋肉の良くない動きや、歯を押すくせなどにより、歯ならびが悪くなることがあります。このような場合には、矯正歯科治療と並行してくせをとるトレーニングを行います。
そのため楽器を演奏するときや口や顎(あご)の使い方によっては、歯ならびを悪くしてしまうこともあるでしょう。
- 楽器の演奏と歯ならびの関係●
では、どのような楽器の演奏が歯ならびに影響するのでしょうか。演奏に口や舌を使う管楽器の演奏では、くちびるを楽器に当て、舌や顎(あご)の位置、口のまわりの筋肉を使って演奏します。
演奏自体に個人差が大きいため、歯ならびへの影響もそれぞれ違いがみられるようです。逆に歯ならびの状態によっては、演奏しにくい場合もあるかもしれません。
- 矯正歯科治療と楽器の演奏を両立させる●
吹奏楽部などで楽器の演奏もしたい、歯ならびも治したい。このような場合はどうしたらいいのでしょうか。
いくつかの解決方法があります。
①矯正歯科治療による影響の少ない楽器を選ぶ。
②矯正歯科治療と楽器演奏に取り組む時期をずらす。
現在は歯を支えている骨がしっかりしていれば、矯正歯科治療の開始時期に年齢制限はありません。
矯正歯科治療では、一本一本の歯を正確に動かすことができるようにブラケットとワイヤーを歯の表面につけて行う方法(固定式装置)が多く行われています。
矯正装置をつけて演奏するのに慣れるまで、演奏しにくい期間がありますが、少しずつ慣れていきます。場合によっては、担当の矯正歯科の先生と相談して、影響の少ない矯正装置を検討しても良いかもしれません。
一般的に、クラリネットやサックスは下の前歯が装置の影響を受けやすいと言われています。金管楽器では、トロンボーンやチューバでは影響が出にくいと言われています。
- 患者さんの体験談●
矯正歯科治療をしながら中学・高校と吹奏楽部に所属していた患者さんの話を紹介します。
入部前に矯正装置をつけていたためか、特に楽器の演奏が大変だなどはなかったと話してくれました。中学ではホルン、高校ではファゴットでしたが、どちらも問題はなかったそうです。ただし、演奏するときにブラケットがあたるときは、矯正歯科医院でもらったワックスを付けて、痛くないようにしていたとのことです。
患者さんの中には、矯正歯科治療を始めるにあたり、楽器を変更する人や大学へ進学してから矯正治療を開始する人もいます。
- 矯正歯科治療をするときに気をつけること●
楽器演奏を行う患者さんが矯正歯科治療を受けるときは、どのようなことに注意したらいいでしょうか。
①治療開始前に、楽器の演奏をしているか、またはこれから楽器を始めようとしていることを、担当の矯正歯科の先生と部活の先生に相談してみましょう。そのときにどのような楽器をどのように演奏するのか話してみてください。
②演奏中に矯正装置とくちびるやほほがあたる場合は、ワックスや市販の楽器用プロテクターなどでカバーしてください。
③矯正治療期間を長引かせないために、
1.歯磨きはしっかりする
2.万一、矯正装置が壊れたら、すぐに連絡して直してもらう
3.定期的にしっかり通院する
4.矯正治療に必要な指示は必ず守る
など、歯ならびがきれいに治るように積極的に取り組みましょう。
日本臨床矯正歯科医会 神奈川支部発行