顎変形症の矯正治療

①あごの形も改善する矯正治療
矯正治療は歯並びだけや改善しても治らない方がおられます。
それは下顎や上顎が大きすぎたり、小さすぎたり、また、あごが右や左に曲がっている方です。
このような方を「顎変形症」と呼び、矯正治療と口腔外科、または形成外科であごの手術をして改善します。

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②治療の必要性について
(1)コンプレックスの改善
顎変形症の患者さんのほぼ全員が外見を気にして来院します。
この顔貌の改善を伴う矯正治療は、元来、美容目的でなく、咬み合わせや発音などの機能の改善が目的です。
したがって健康保険が適応されます。自分の求める外見とは必ずしも一致しませんので、ご理解下さい。

(2)機能の改善
この治療の必要性として、
①よく咬めて②発音も良くなるばかりか、③むし歯や歯周病の予防にもなります。
この他にも上下のあごの位置がズレていると、耳の前方にある④顎関節というあごと頭をつなぐ間にある関節円板の位置に異常が起きて、
あごを動かすと痛みが出たり、口が開きにくくなる(顎関節症)になることがあります。これらもかなり改善します。
また、⑤下顎が著しく小さい方は、のどの奥にある空気の通り道、気道が狭くなります。
すると、寝ているとき呼吸がしづらくなり、いびきをかき、時には呼吸が一時的に止まったりします。
これが閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)といわれる病気です。特にこのような方は早めにご相談下さい。

③あごが変形する主な原因
人の顔つきは親からもらった遺伝と言われています。
しかし、幼少から日常に行っている悪い習慣が原因の場合もあります。
その1つにいつも寝るとき、右を下に寝てたり、頬杖を右手で行っていると下あごが左にズレてくることがあります。
また、幼少の頃、ふざけて下あごを前に出して遊んだりしていると、骨格性の受け口になる可能性もあります。
この他にも歯の位置が悪く下あごを曲げて咬む習慣がつくこともあります。
まだ小さいから大丈夫と思わないで、気になれば一度、矯正単科専門医にご相談ください。

④治療の手順
(1)初診相談
歯ならびだけでなく、あごの形も気になればどこで相談すればよいのでしょうか?
一般的には歯ならびも気になる顎変形症の方は大学の矯正歯科か、我々のような矯正単科専門開業医を訪ねる場合が多いでしょう。
歯ならびよりあごの形を改善したい方は口腔外科や形成外科、あるいは美容整形外科に行くこともあるでしょう。
実は、我々矯正歯科医の考えは、外科処置前にしっかり矯正治療を行うことがこの治療の成功の鍵と思います。
その理由は、外科処置後の良好な咬合を獲得することによって、外科処置後の咬み合わせの安定がよく、手術後の矯正治療の期間も短くなるからです。
例外として、本人の意思や咬合の状況によっては、外科を矯正治療前に行うこともあります。(サージカルファースト)
また、矯正歯科医や口腔外科医によっては、「顎変形症」を多く手がけている方やそうでない方もおられます。
さらに、保険の診療を行っていない医療機関もありますので、ホームページ等で十分調べて受診して下さい。

(2)検査と診断
顎変形症の矯正治療は、通常の矯正治療と異なり、検査の種類が多くなります。その1つにあごの動きや筋肉の状況を調べる「機能検査」があります。
その他にレントゲンや歯の模型を採って、あごの形や咬み合わせの状態を調べる通常の「形態検査」があります。これらの検査を分析して、次回、治療方針を決める診断を受けて頂きます。

⑤治療
治療は手術後のよく咬める歯ならびを想定して、歯を並びかえます(術前矯正1~3年)。
次に口腔外科や形成外科であごの手術を行った後も矯正治療は続きます(術後矯正半年~2年)。
咬み合わせやあごの形が改善し、装置を外した後も歯が動かないように簡単な装置(保定装置)を入れます(保定治療)。
この装置を1日中入れていただき、3~6ヵ月毎に矯正医、または形成医の診療所または病院に通院します。
この保定治療も約2~3年で全て終了するのが一般的です。

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歯ならびだけでなく、あごの形は本人だけしか理解できない悩みです。
いつでもお近くの我々矯正単科専門開業医などにお気軽にご相談下さい。

*神奈川県歯科医師会第14回学術大海と第43回日本臨床矯正歯科医会・長野大会にポスター発表
平成28年1月10日に、パシフィコ横浜アネックスホールで、神奈川県歯科医師会主催の学術大会が開催されました。
神奈川支部学術委員会の先生方が、「下顎第二大臼歯の萌出障害に対する歯科矯正学的アプローチ」というテーマでポスター発表しました。
また、平成28年2月24日、25日の日本臨床矯正歯科医会・長野大会にも、「下顎第二大臼歯の位置関係について」と題し、ポスター発表を行いました。
参加された多くの歯科医師や歯科衛生士の方々と、情報交換できる大変有意義な研鑽の場となっています。

参考文献:日本臨床矯正歯科医会 神奈川支部


開咬とは、どのような歯並び?

①わるい歯並び(不正咬合)には、出っ歯(上顎前突)、受け口(下顎前突)、らんぐい歯(叢生)の他に、開咬があります。
しかし、開咬は、一般にはなじみのうすい歯並びです。具体的な症状としては、歯をかみ合わせた時に上下の前歯の間にすき間が開いて、食べ物が噛み切れないような症状を言います。
日本人の不正咬合の発生率としては、出っ歯、らんぐい歯、受け口が多く、開咬の発生率は約4%です。
開咬は、本人や保護者にとって気づきにくい歯並びのため、学校の歯科健診やかかりつけ歯科医に指摘されて初めて気づくことが多いのです。

②開咬は、このような障害がある
開咬には、
・前歯で食べ物を噛み切れない
・舌が出て、サ行、タ行などの発音がはっきりしない
・話す時に、前歯の間から舌がみえる
・クチャクチャと音をたてて食べ、食べ物をこぼす
・口を開けて呼吸し、口元がだらしない
などの障がいがあります。

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③開咬の原因は
開咬の原因は、頑固な指しゃぶりから移行したものや口呼吸によって生じた舌癖によるものが多いのです。
・頑固な指しゃぶりにより、上下前歯にすき間ができる
・飲み込む時に、前歯のすき間に舌が出る
・扁桃腺肥大や鼻炎などにより、口呼吸になる
・舌の下についているひも(舌小帯という)が短い
開咬は上下の前歯の間に指や舌がはさまり、上下前歯の間にすき間があくのです。
その他、環境的な要因としてアレルギー性鼻炎などにより口呼吸する習慣が、舌癖を出やすくします。
通常、私たちは意識せずに1日1500~2000回ぐらい飲み込み(嚥下)をおこなっています。
舌癖があると、前歯を押す舌の力は普通の人の3倍ぐらいになります。
その結果、唾液や食べ物をのどへ送る舌の動きがわるくなります。
最近の研究では、飲み込み時の舌の力だけでなく、リラックス時の舌の低い位置(低位舌)が歯並びをわるくすると言われています。

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④開咬を治すには、いくつかの方法がある
開咬を治すのは、なかなか厄介なのです。
舌は、自分の意志で動かせる筋肉であり、患者さん自身が舌癖を治そうとする気持ちが大切です。
私たち矯正歯科医や歯科衛生士は、舌癖を治す指導(MFTという)をしたり、舌癖を意識させる装置(ハビットブレーカーという)を使うことにより支援します。
患者さんや保護者の協力があると、その効果はめざましくなります。

1)指しゃぶりが原因の場合
まず、指しゃぶりをやめさせる指導をします。そして、次に指しゃぶりの結果生じた上下前歯のすき間から出る舌癖を訓練します。
指しゃぶりが、4~5歳まで続くと、歯並びがわるくなります。指しゃぶりが6~7歳まで続くと、永久歯が生え変わっても開咬になってしまいます。

2)舌癖が原因になっている場合
舌癖を治す舌の訓練を指導します。具体的には、歯科衛生士が舌の動きを10回前後の訓練を指導します。
この舌の訓練を口腔筋機能療法(MFT)と呼び、舌の機能を正しく、口のまわりの筋肉を調和のとれた状態にしていきます。
MFTは、舌や唇の訓練であり、スポーツジムやウオーキングなどで衰えている筋肉を鍛える運動と同様に飲み込む方の訓練なのです。

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3)舌癖の訓練で改善しない場合
フェンスやトゲ付の矯正装置(ハビット・ブレーカーという)を入れます。
矯正歯科医院では、舌が前に出ないようなフェンスやトゲのついた矯正装置を作り、舌が前に出ないように意識してもらいます。

4)口呼吸がある場合
扁桃肥大やアレルギー性鼻炎などがあり口呼吸をしていると、舌癖が出やすいのです。
扁桃肥大や鼻炎がある場合には、耳鼻科医に相談して下さい。

5)舌のひもが短い(舌小帯短縮症という)場合
飲み込む時やタ行、ラ行のなどの発音時に、舌の先が上に持ち上がりにくくなります。
舌の動きが良くなるように、歯科医院で舌のひもを切ることがあります。

6)永久歯列期(中・高生頃)で開咬がある場合
舌の訓練をおこない、矯正装置(マルチブラケット法という)で歯を移動して治します。

⑤開咬の治療は、早い方が良い
開咬は、放っておくと舌癖などによって歯並びやあごの骨にまで影響を与え、矯正治療が難しくなる歯並びです。
開咬は、年齢や症状によって治す方法が異なりますので、早い時期(就学前など)に矯正歯科医に相談しましょう。

参考文献:日本臨床矯正歯科医会 神奈川支部


成人(おとな)の矯正治療とは

①成人でも矯正治療はできます
矯正治療は、子どもだけと考えていませんか?成人の矯正治療は、きれいな歯ならびと良い咬み合わせ、
口元の改善などを目標にしています。矯正治療は口の機能(咬む、のみ込み、話す、呼吸するなど)を上し、
健康で第一印象を良くする効果があります。20代の方だけでなく、歯を支える骨(歯槽骨)や歯肉が健康な状態であれば、40~60代でも成人矯正治療は可能です。
但し、レントゲンを撮影し、歯周病が進んで歯を支える骨が少ない場合には矯正治療ができないこともあります。
通常成人の矯正治療には、目立たない装置を使うことが主流になります。
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②成人矯正治療は本人の意思で始まる
子どもの矯正治療は、本人よりも保護者の希望が優先されることが多いのが事実です。
そのため本人のモチベーションが低く、治療の進み方、結果が思わしくない場合があります。
しかし社会人になり就職や結婚時になると、子どもの頃に矯正治療をしてよかったと親に感謝するものです。
一方、成人では、本人の意思できれいな歯並びや良い咬み合わせにしたいと矯正治療を開始します。
従って成人はモチベーションが高く、矯正治療中の歯みがきや装置の手入れに注意を支払うため、効率的に治療が進むことが多いのです。
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③成人矯正のメリット
成人矯正治療は次のようなメリットがあります。

1、 第一印象を良くする(外見を良くする)
出っ歯、歯のでこぼこ、受け口などの歯並び、咬み合わせ、出っ張った口元を改善できます。

2、お口の機能を良くする
咬む、のみ込む、話す、呼吸するなどの口の機能は、わるい歯ならびや咬み合わせにより影響を受けます。
矯正治療後には、良く咬めるようになった、発音がはっきりした、口呼吸が鼻呼吸になったなどの良い効果があります。
また食べ物を良く咬むことで、消化や吸収を助け胃腸への負担を減らします。

3、虫歯や歯周病のリスクが減る
歯ならびが悪く、でこぼこが多いと、よく磨けないため、虫歯や歯周病の原因になります。
矯正治療により歯ならびが良くなると、歯みがきがし易くなり、虫歯や歯周病のリスクが少なくなります。

4、歯並びや口もとを気にしないで、ポジティブな人生に
コンプレックスだった歯ならびや口元を気にしないで、
人前で話せるようになった、笑えるようになったなど、ポジティブな自分に変わることができるでしょう。
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④子どもの矯正と成人矯正のちがい
基本的に歯が動く仕組みは子どもも成人も変わりません。
成人では成長発育が終わっているため、歯が動く速さは子どもの矯正治療と比べて少し遅くなります。
また、矯正装置も子どものように、顎の成長を利用するような装置は使うことはできません。
そのため、でこぼこの歯ならびや、出っ歯を改善するためには、歯を並べるスペースを作るために犬歯の後ろの歯を抜く可能性があります。
成人では本人の意思で矯正治療を開始し自分自身で費用を負担することが多いため、矯正治療への協力が良いというメリットがあります。
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⑤使用する矯正装置

1、歯の表面に、目立たない装置(ブラケット)をつける方法
最近では、金属の装置ではなく、セラミックやプラスティック製の乳白色や透明の装置を使います。
テレビに映るスポーツ選手や芸能人も、近年、装置を気にせずに矯正治療をおこなう人が増えています。

2、歯の裏側に、装置(ブラケット)をつける方法
歯の表側に装置をつけないため、矯正治療をしていることが他人に分からないメリットがあります。
接客業の方など外見を気にされる方には良いでしょう。
しかし発音がしづらい、歯がみがきにくい、費用が多少高くなるなどデメリットもあります。

3、マウスピース型装置を装着する方法
取り外しのできる薄型のマウスピースを段階的に取り替えながら歯ならびの治療を行う治療方法です。
目立たないこと、また、食事の際や歯磨きの際、装置を外していれば普段と変わらないというメリットがありますが、
適応症に限りがあり、すべての方が治療できるわけではありません。
何よりも本人がマウスピースを1日20時間程度装着する必要があります。(装置を装着していないと治療が進みません。)

⑥まとめ
成人の矯正治療は、歯ならびや口元を良くするだけでなく、咬む、のみ込む、話す、呼吸するなどの口の機能を改善し健康につながります。
言い換えれば、その人の生き方、人生を変えると言っても良いでしょう。
成人の方でも遅くはありませんので、是非、矯正歯科専門開業医にご相談下さい。
矯正治療は期間も費用もかかりますので、担当医より充分な説明を受け納得されてから開始して下さい。

参考文献:日本臨床矯正歯科医会 神奈川支部


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