上顎前突(じょうがくぜんとつ)(出っ歯)とは、どのような歯並び?
- ①上顎前突とは
上顎前突は、上の前歯や上あごが前方に出ている歯並びです。この歯並びは日本人に
多く、俗に、“出っ歯”や“反(そ)っ歯”と呼ばれています。
上の前歯や上あごが前方に出ていると、口元が突出して唇が閉じにくくなり口呼吸に
なります。無理に口を閉じると、あごの先に梅干し状のしわができて不満そうな表情に
なります。子どもでは、転んだ時に上の前歯を折りやすいことがあります。
また、大きく口を開けて笑った時に、上の前歯の歯ぐきが出て目立ちます。外国では、
このような症状を“ガミースマイル”と呼んでいます。
・ひと昔前の日本人の印象は・
ひと昔前の日本人と言えば、「出っ歯、細い目でメガネをかけカメラを首に下げて猫背」
と良い印象ではありませんでした。“ティファニーで朝食を”というオードリー・ヘップバーン主演の映画では、ミッキー・ルーニーが日本人の料理人を出っ歯でメガネをかけて
演じていました。
外国ではきれいな歯並びはステイタスですが、近頃の日本でも歯並びがわるい若者
(とくに成人女性)を見かけることが少なくなりました。本人や保護者も、就職、
結婚などの対人関係を意識しているのでしょう。
- ②上顎前突の原因は
・幼児期の長期間にわたる指しゃぶり、食べ物や水をのみ込む時に舌で前歯を押す癖、
下唇を咬む癖などのわるい癖(幼稚園児や小学生)などで上の前歯を押し出す
・アレルギー性鼻炎、扁桃肥大などで口呼吸をする
・両親や祖父母の歯並びの遺伝がある
- ③上顎前突の治療は
上顎前突は、その症状、年齢、協力度などにより治療法が異なります。
・低年齢(混合歯列)の場合(主に小学生)・
◆上あごの成長を抑えるために、取り外しのできる装置を使う
◆上あごの六歳臼歯に金属のバンドを接着し、学校からの帰宅後と夜(就寝時も)に
“ヘッドギアー”という装置をつける
◆後退している下あごを、前方へ成長させる“機能的矯正装置”を学校からの帰宅後と
夜(就寝時も)に使う
・永久歯が全て生えそろっている場合(中・高校生、成人)・
◆固定式の装置を使う
歯の表側にマルチブラケット装置(ブレース)をつけて、歯を動かしていきます。
金属の部品ではなく目立たないプラスチックやセラミックの部品をつけることも
できます。歯の表側の装置を望まない場合には、歯の裏側に装置をつけることも
できます(リンガルブラケット法という)。
上顎前突の治療は、あごの成長をコントロールできる年齢では早期治療をおこないます。
症状の程度や年齢により、非抜歯治療か抜歯治療かが決まります。例えば、永久歯が
全て生えそろった年齢で、上顎前突の症状が著しく、リラックスしている時に口元が出て
口が閉まらない場合には、上の前歯を後退させるためのスペースづくりとして、犬歯の
後ろの歯を抜く必要があります。
- ④上顎前突の治療後は、このように変わる
✿出っ歯が治り、きれいな歯並びになる
✿口元が引っ込み、リラックスしている時にも口が閉じている
✿鼻で呼吸できるようになる(アレルギー性鼻炎、扁桃肥大がない場合)
✿人前で歯並びが気にならなくなり、自信になる
✿口呼吸が改善し歯肉の炎症が減少する
✿咬み合わせが良くなり、全身の健康につながる
- ⑤治療開始時期は、まず矯正歯科医に相談を!
レントゲン等の資料を分析して年齢やその症状により“早期治療”を開始した方が良いか、
永久歯が生えそろった中学生以降に“本格矯正治療”が必要かを診断します。時期が早い
場合には、定期的にお呼びし、観察をおこないます。
矯正治療は開始するタイミングがありますので、素人判断せずに、まず矯正歯科医に
相談してください。
参考文献:日本臨床矯正歯科医会 神奈川支部