反対咬合について パート2

パート1では、
反対咬合の具体的な症状と原因について機能性反対咬合と骨格性反対咬合の原因についてご説明しました。
今回は、2種類の反対咬合の治療方法についてご説明しましょう。

①反対咬合の治療開始時期について
反対咬合の矯正治療を開始する時期は、その症状や原因、その種類(機能性か、骨格性か)初診年齢などによっても違います。
反対咬合は、どちらのタイプであっても低年齢で早期治療を開始するのが基本的な考え方です。
家系に反対咬合を認める場合は、増齢により身長が伸びる頃には、下あごも一緒に症状がひどくなる傾向があります。
そのため、要注意な不正咬合であり治療期間は長期に及ぶことがあります。

反対咬合治療の考え方は、まず早期治療(一期治療)をおこない、
その後の歯並びや下あごの成長を観察し、必要ならば本格的治療(二期治療)で仕上げをおこなうことが基本です。
なぜならば、早期治療をおこなっても、永久歯が全て生え揃う12歳頃は下あごの成長が一番盛んな時期だからです。
歯の生える位置の異常や習慣などによる機能的な反対咬合は、
原因が局所的であり下あごの成長により影響を受けないため一期治療のみで終了することが多いでしょう。
一方、家系に反対咬合を認める場合には、身長の伸びにつれて下あごの成長が突き出してくるため要注意なのです。
そのため、矯正治療を装着で下あごの成長を抑え、上あごの前方への発育を刺激するなどをおこない長期に経過を観察しなければなりません。
家族の方にお聞きし家系に反対咬合の人が見当たらない場合であっても、
成長期に身長の伸びにより下あごが盛んに発育してくるケースに遭遇することがあります。
日本人では、反対咬合が世界で一番多い国民であり、発言頻度は5~6%と言われています。
私たちが知らない先祖に、反対咬合の方がいたのかもしれません。

 

次のような反対咬合の症状は、早目にご相談ください
1)上下の前歯が、逆のかみ合わせ
2)下くちびるや下あごが前方に出ている顔かたち
3)食べ方や噛み方がおかしい
4)サ行などの発音がはっきりしない
5)家系に反対咬合の人が多く見られる
このような症状に気づいた時には、まず私たちの矯正専門開業医にご相談ください。
治療時期が早い場合には、矯正歯科医院で定期的に経過観察を行います。

治療開始時期の目安を、フローチャートにすると・・

まず相談

早期治療が必要な場合には一期治療

一期治療終了後、歯並びや下あごの成長観察
↓                    ↓
治療経過が良い場合には終了       仕上げが必要な場合には二期治療開始

但し、患者さんが最初に矯正歯科医院を訪れる年齢により、二期治療から開始することもあります。

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②反対咬合のタイプと、用いる矯正装置について
機能性反対咬合の場合
機能性反対咬合は、一期治療(早期治療)だけで済む可能性があり、矯正治療後の経過は良好なものが多いと言えます。
習癖などで唇や舌などの口の周りの筋肉機能のバランスが崩れている場合は、筋肉のトレーニングを行います。
舌が下の歯列の中で低い位置にある場合(低位舌という)には、下の前歯を前方に押すため舌を持ち上げる訓練や装置を用いることがあります。
一般的に、上下の前歯の生え方の異常により、干渉して反対咬合になっている場合には、歯の位置を矯正装置の力で移動して歯の干渉を除く治療をします。
使用する装置は、口の中で取り外しができる方式や口のなかに固定する方式の矯正装置を用います。

骨格性反対咬合の場合
骨格性反対咬合の人の顔の骨格は、上あごが小さく(前方への発育がわるい)下あごが大きく(前方への発育が過剰)て、顔つきは下あごが突き出ています。
一般的に、骨格性反対咬合は、低年齢で上あごの成長を促し、下あごの成長を抑えて上下のあごの前後差を改善する矯正装置を用います。
この装置は、「上あご前方牽引装置」と呼ばれ、主に夜間装着してあごの成長をコントロールします。
骨格性反対咬合は、一期治療後のあごの成長や歯並びを観察して二期治療が必要になることが多いタイプです。
二期治療の仕上げは、歯の表面に部品をつけた固定式の装置(マルチブラケットと呼ぶ)でワイヤーの弱い力で歯を移動して治療をおこないます。
また、上の歯列が狭い症状(狭?歯列と呼ぶ)では、歯列や上あごを横方向に拡大して発育を刺激するような装置を用います。
反対咬合の家族性が強い場合、矯正装置により成長発育をコントロールができない場合や成人で骨格の改善を必要とする場合(顎変形症と呼ぶ)では、
大学生になり成長が終了した時期に矯正治療と外科手術を併用する治療法が必要になることもあります。

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③反対咬合の矯正治療は、早目に矯正歯科医にご相談下さい
反対咬合は、他の不正咬合と違い咬み方、のみ込み方、発音などお口腔機能への障害があります。
また、思春期に下あごの過剰な成長発育による精神面への影響があると考えられています。
そのため、お子さんの将来を考えて反対咬合は、低年齢時に矯正治療を開始することが望ましいのです。
学校の歯科健診で不正咬合と指摘されたり歯並びが気になった時点で、まず、私たち矯正歯科専門開業医にご相談されることをお勧めします。
医院選びは、長期的な矯正治療が必要になることが多いため、経験豊富な矯正歯科専門の歯科医師が常勤していることが大切です。
本やインターネットなどで自己判断されることは、適正な治療時期を逃す場合があります。
まず経験豊富な矯正歯科医にご相談下さい。

参考文献:日本臨床矯正歯科医会 神奈川支部

 


顎変形症の矯正治療

①あごの形も改善する矯正治療
矯正治療は歯並びだけや改善しても治らない方がおられます。
それは下顎や上顎が大きすぎたり、小さすぎたり、また、あごが右や左に曲がっている方です。
このような方を「顎変形症」と呼び、矯正治療と口腔外科、または形成外科であごの手術をして改善します。

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②治療の必要性について
(1)コンプレックスの改善
顎変形症の患者さんのほぼ全員が外見を気にして来院します。
この顔貌の改善を伴う矯正治療は、元来、美容目的でなく、咬み合わせや発音などの機能の改善が目的です。
したがって健康保険が適応されます。自分の求める外見とは必ずしも一致しませんので、ご理解下さい。

(2)機能の改善
この治療の必要性として、
①よく咬めて②発音も良くなるばかりか、③むし歯や歯周病の予防にもなります。
この他にも上下のあごの位置がズレていると、耳の前方にある④顎関節というあごと頭をつなぐ間にある関節円板の位置に異常が起きて、
あごを動かすと痛みが出たり、口が開きにくくなる(顎関節症)になることがあります。これらもかなり改善します。
また、⑤下顎が著しく小さい方は、のどの奥にある空気の通り道、気道が狭くなります。
すると、寝ているとき呼吸がしづらくなり、いびきをかき、時には呼吸が一時的に止まったりします。
これが閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)といわれる病気です。特にこのような方は早めにご相談下さい。

③あごが変形する主な原因
人の顔つきは親からもらった遺伝と言われています。
しかし、幼少から日常に行っている悪い習慣が原因の場合もあります。
その1つにいつも寝るとき、右を下に寝てたり、頬杖を右手で行っていると下あごが左にズレてくることがあります。
また、幼少の頃、ふざけて下あごを前に出して遊んだりしていると、骨格性の受け口になる可能性もあります。
この他にも歯の位置が悪く下あごを曲げて咬む習慣がつくこともあります。
まだ小さいから大丈夫と思わないで、気になれば一度、矯正単科専門医にご相談ください。

④治療の手順
(1)初診相談
歯ならびだけでなく、あごの形も気になればどこで相談すればよいのでしょうか?
一般的には歯ならびも気になる顎変形症の方は大学の矯正歯科か、我々のような矯正単科専門開業医を訪ねる場合が多いでしょう。
歯ならびよりあごの形を改善したい方は口腔外科や形成外科、あるいは美容整形外科に行くこともあるでしょう。
実は、我々矯正歯科医の考えは、外科処置前にしっかり矯正治療を行うことがこの治療の成功の鍵と思います。
その理由は、外科処置後の良好な咬合を獲得することによって、外科処置後の咬み合わせの安定がよく、手術後の矯正治療の期間も短くなるからです。
例外として、本人の意思や咬合の状況によっては、外科を矯正治療前に行うこともあります。(サージカルファースト)
また、矯正歯科医や口腔外科医によっては、「顎変形症」を多く手がけている方やそうでない方もおられます。
さらに、保険の診療を行っていない医療機関もありますので、ホームページ等で十分調べて受診して下さい。

(2)検査と診断
顎変形症の矯正治療は、通常の矯正治療と異なり、検査の種類が多くなります。その1つにあごの動きや筋肉の状況を調べる「機能検査」があります。
その他にレントゲンや歯の模型を採って、あごの形や咬み合わせの状態を調べる通常の「形態検査」があります。これらの検査を分析して、次回、治療方針を決める診断を受けて頂きます。

⑤治療
治療は手術後のよく咬める歯ならびを想定して、歯を並びかえます(術前矯正1~3年)。
次に口腔外科や形成外科であごの手術を行った後も矯正治療は続きます(術後矯正半年~2年)。
咬み合わせやあごの形が改善し、装置を外した後も歯が動かないように簡単な装置(保定装置)を入れます(保定治療)。
この装置を1日中入れていただき、3~6ヵ月毎に矯正医、または形成医の診療所または病院に通院します。
この保定治療も約2~3年で全て終了するのが一般的です。

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歯ならびだけでなく、あごの形は本人だけしか理解できない悩みです。
いつでもお近くの我々矯正単科専門開業医などにお気軽にご相談下さい。

*神奈川県歯科医師会第14回学術大海と第43回日本臨床矯正歯科医会・長野大会にポスター発表
平成28年1月10日に、パシフィコ横浜アネックスホールで、神奈川県歯科医師会主催の学術大会が開催されました。
神奈川支部学術委員会の先生方が、「下顎第二大臼歯の萌出障害に対する歯科矯正学的アプローチ」というテーマでポスター発表しました。
また、平成28年2月24日、25日の日本臨床矯正歯科医会・長野大会にも、「下顎第二大臼歯の位置関係について」と題し、ポスター発表を行いました。
参加された多くの歯科医師や歯科衛生士の方々と、情報交換できる大変有意義な研鑽の場となっています。

参考文献:日本臨床矯正歯科医会 神奈川支部


開咬とは、どのような歯並び?

①わるい歯並び(不正咬合)には、出っ歯(上顎前突)、受け口(下顎前突)、らんぐい歯(叢生)の他に、開咬があります。
しかし、開咬は、一般にはなじみのうすい歯並びです。具体的な症状としては、歯をかみ合わせた時に上下の前歯の間にすき間が開いて、食べ物が噛み切れないような症状を言います。
日本人の不正咬合の発生率としては、出っ歯、らんぐい歯、受け口が多く、開咬の発生率は約4%です。
開咬は、本人や保護者にとって気づきにくい歯並びのため、学校の歯科健診やかかりつけ歯科医に指摘されて初めて気づくことが多いのです。

②開咬は、このような障害がある
開咬には、
・前歯で食べ物を噛み切れない
・舌が出て、サ行、タ行などの発音がはっきりしない
・話す時に、前歯の間から舌がみえる
・クチャクチャと音をたてて食べ、食べ物をこぼす
・口を開けて呼吸し、口元がだらしない
などの障がいがあります。

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③開咬の原因は
開咬の原因は、頑固な指しゃぶりから移行したものや口呼吸によって生じた舌癖によるものが多いのです。
・頑固な指しゃぶりにより、上下前歯にすき間ができる
・飲み込む時に、前歯のすき間に舌が出る
・扁桃腺肥大や鼻炎などにより、口呼吸になる
・舌の下についているひも(舌小帯という)が短い
開咬は上下の前歯の間に指や舌がはさまり、上下前歯の間にすき間があくのです。
その他、環境的な要因としてアレルギー性鼻炎などにより口呼吸する習慣が、舌癖を出やすくします。
通常、私たちは意識せずに1日1500~2000回ぐらい飲み込み(嚥下)をおこなっています。
舌癖があると、前歯を押す舌の力は普通の人の3倍ぐらいになります。
その結果、唾液や食べ物をのどへ送る舌の動きがわるくなります。
最近の研究では、飲み込み時の舌の力だけでなく、リラックス時の舌の低い位置(低位舌)が歯並びをわるくすると言われています。

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④開咬を治すには、いくつかの方法がある
開咬を治すのは、なかなか厄介なのです。
舌は、自分の意志で動かせる筋肉であり、患者さん自身が舌癖を治そうとする気持ちが大切です。
私たち矯正歯科医や歯科衛生士は、舌癖を治す指導(MFTという)をしたり、舌癖を意識させる装置(ハビットブレーカーという)を使うことにより支援します。
患者さんや保護者の協力があると、その効果はめざましくなります。

1)指しゃぶりが原因の場合
まず、指しゃぶりをやめさせる指導をします。そして、次に指しゃぶりの結果生じた上下前歯のすき間から出る舌癖を訓練します。
指しゃぶりが、4~5歳まで続くと、歯並びがわるくなります。指しゃぶりが6~7歳まで続くと、永久歯が生え変わっても開咬になってしまいます。

2)舌癖が原因になっている場合
舌癖を治す舌の訓練を指導します。具体的には、歯科衛生士が舌の動きを10回前後の訓練を指導します。
この舌の訓練を口腔筋機能療法(MFT)と呼び、舌の機能を正しく、口のまわりの筋肉を調和のとれた状態にしていきます。
MFTは、舌や唇の訓練であり、スポーツジムやウオーキングなどで衰えている筋肉を鍛える運動と同様に飲み込む方の訓練なのです。

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3)舌癖の訓練で改善しない場合
フェンスやトゲ付の矯正装置(ハビット・ブレーカーという)を入れます。
矯正歯科医院では、舌が前に出ないようなフェンスやトゲのついた矯正装置を作り、舌が前に出ないように意識してもらいます。

4)口呼吸がある場合
扁桃肥大やアレルギー性鼻炎などがあり口呼吸をしていると、舌癖が出やすいのです。
扁桃肥大や鼻炎がある場合には、耳鼻科医に相談して下さい。

5)舌のひもが短い(舌小帯短縮症という)場合
飲み込む時やタ行、ラ行のなどの発音時に、舌の先が上に持ち上がりにくくなります。
舌の動きが良くなるように、歯科医院で舌のひもを切ることがあります。

6)永久歯列期(中・高生頃)で開咬がある場合
舌の訓練をおこない、矯正装置(マルチブラケット法という)で歯を移動して治します。

⑤開咬の治療は、早い方が良い
開咬は、放っておくと舌癖などによって歯並びやあごの骨にまで影響を与え、矯正治療が難しくなる歯並びです。
開咬は、年齢や症状によって治す方法が異なりますので、早い時期(就学前など)に矯正歯科医に相談しましょう。

参考文献:日本臨床矯正歯科医会 神奈川支部


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