埋伏している歯を矯正治療するには
- 埋伏歯ってなに?
乳歯が抜けて永久歯にかわる時、乳歯の歯根や永久歯を被う歯槽骨は徐々に吸収され、
歯肉を破って歯が生えてきます。しかし、永久歯があごの骨の中に埋まったまま
生えてこない状態を“埋伏歯”と呼んでいます。
埋伏しているかどうか疑われる症状がありますが、埋伏歯は、患者さんの痛みや
違和感もありませんので、発見が遅れがちです。
埋伏歯があるかどうか、またその位置を確認することは、パノラマレントゲン写真や
歯科用のCTを撮影しないとわかりません。レントゲンを撮影して埋伏歯が見つかった
場合には、発見が早いほど矯正治療で歯列内に引出せる可能性が高くなります。
- 埋伏する原因と頻度は
通常永久歯が生える時期になっても、歯冠(歯の頭)が出てこない埋伏歯には、
次のような原因が考えられます。
①歯列に歯が生えるスペースが不足している(あごが小さく歯列が狭い)
②外傷などで永久歯の芽の位置が移動した
③永久歯の芽の位置が、最初からおかしい
④過剰歯や障がい物が、永久歯が生えるのを妨げている
上の犬歯が埋伏している状態はわかりにくいため、放置されやすいのです。歯の治療時に
歯科医院でレントゲンを撮影して発見されます。埋伏歯が見つかった場合には、早めに
矯正歯科専門開業医に相談することをお薦めします。
上の犬歯が埋伏する頻度は、約2%で男性より女性の方が多いのです(約2倍)。
そして両側ではなく片方だけ埋伏の方が圧倒的に多いと報告されています。
厄介なことに約78%の上の犬歯の埋伏歯が隣の歯根にぶつかって、健全な歯根を短くして
しまうのです。
- 埋伏歯を歯列内に誘導する方法は
レントゲンを撮影し埋伏歯を発見した場合には、
①遅くまで残っている乳歯を抜歯する
②矯正装置により歯列を広げてスペースをつくる
③埋伏している歯を被う歯肉の一部を切開する
④埋伏している歯に部品をつけて歯列内に引き出す順序でおこないます。
埋伏歯を助けるには、発見が早いほど隣の歯の歯根を短くすることもなく歯列内への
誘導がスムーズにいきます。
・前歯が埋伏している場合・
埋伏している歯の歯根が1/3程度未完成であれば、矯正装置により生える場所を確保
し歯列内に引き出す事が可能です。私たちは、埋伏歯を歯列内に引き出せるかどうかを
見極める条件として、
①埋伏している状態(傾斜、深さ)
②埋伏歯のまわりの状態(過剰歯、嚢胞、歯牙腫等)
③歯根の完成度
などにより矯正装置で誘導する方法や期間が決まります。歯列内に誘導しても歯根が
湾曲しているため、歯として使えない場合もあります。まれに埋伏している歯が、
まわりの骨と癒着している場合は引き出せません。
・上の犬歯が埋伏している場合・
歯列を広げたり乳歯の抜歯をしても、埋伏している歯が生えてこない場合には、
矯正装置をつけて埋伏している歯を引き出し、その後、全体の歯並びや咬みあわせを
治していくことが必要になります。
埋伏した犬歯のまわりに嚢胞や歯牙腫がある場合は、それらの除去も必要です。犬歯の
引出しを含めて、症状にもよりますが、目安として全体で1~2年の矯正治療期間が
必要でしょう。上の犬歯が埋伏している場合には安易に抜かないで、まず矯正歯科
専門開業医にご相談下さい。
参考文献:日本臨床矯正歯科医会 神奈川支部発行