反対咬合について パート1

①反対咬合の具体的な症状
正しい歯並びでは、上下の前歯の位置関係は上の歯が前で下の歯が後ろに位置しています。
これとは反対に、上の前歯が後ろで下の前歯が前に咬んでいる歯並びを「反対咬合」といいます。
また「受け口」と呼ばれることもあります。
「反対咬合」には、ごく軽度から重度の症状のものもあり、全ての症状に同じような治療方法が適応できるとは限りません。
それでは簡単に反対咬合の症状を説明しましょう。

骨格性反対咬合
顎骨に原因がある反対咬合を「骨格性反対咬合」といいます。
つまり下あごが大きすぎることに伴って、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態で、
歯並びよりも顎骨が原因で反対咬合になっていると言えます。
「骨格性反対咬合」では、身長の伸びにより下あごが成長し治療期間が長くなる傾向があります。
さらに上下の顎骨のズレが重度であれば、成人になってから外科手術を行い、下あごを短くして咬み合わせの治療を行うことがあります。
左の二枚の写真は同じ患者さんです。左側が学童前期の横顔で、比較的正常なあごの形をしていますが、
右側の成長後の写真では下あごが前方に成長しているのが分かります。

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機能性反対咬合
「機能性反対咬合」とは、正しい下あごの位置で咬もうとすると、
上下の前歯が先に当たってしまい、奥歯が全く咬めない状態です。
奥歯を咬み合わせるためには、下あごを前に突き出し前歯が当たらないようにして咬むと奥歯が合います。
このように下あごを前に突き出して前歯が反対に咬む症状を、「機能性反対咬合」といいます。
「機能性反対咬合」では、わずかに前歯の位置がずれていることが原因です。
そのため顔つきは反対咬合特有の下あごが突き出た横顔ではないことが特徴です。
矯正治療に関しては、早期(幼稚園児から学童前期)に矯正治療を始めれば、比較的簡単に治ります。
しかし、「機能性反対咬合」でも、成長発育で下あごが大きくなることがあり、
「骨格性反対咬合」に移行してしまう場合がありますので下あごの成長の定期的な観察が必要です。

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②原因は?
原因は、複数考えられます。「骨格性反対咬合」の原因で考えられるのは遺伝です。
当然親子であれば顔が似ているように、顔や顎骨も同じような形態に育ってくることは多くあります。
「機能性反対咬合」の原因は、舌で下の前歯を押し出す癖が考えられます。
物を飲み込む時に、無意識的に舌で下の前歯を押し出す癖は、反対咬合の患者さんの全員といっていいほど認められます。
また扁桃腺が大きいことによって、この舌壁が引き起こされるという考えもあります。
つまり、舌の後ろにある扁桃腺が大きいと、舌が前方に押し出され、さらに舌の力により下の前歯が押し出されていると考えられています。

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③反対咬合は治した方がよいのでしょうか
反対咬合は、できれば早期(幼児園児から学童前期)に矯正治療を開始することをお勧めします。
それでは反対咬合の歯並びは、なぜ治療する必要があるのでしょうか。具体的に説明します。
反対咬合を治したいと考えている患者さんの多くは、反対咬合の歯並びに対してコンプレックスを感じています。
下あごの出ている顔つきを友達から指摘され、精神的に傷ついてしまう人や、下あごが大きいことを非常に気にしてしまう人もいます。
他の歯並びに比べると、反対咬合は本人のコンプレックスに繋がりやすいと推測されます。
また、反対咬合の本人が低年齢で本人が気にしていない場合でも、
思春期になり情緒が発達すると、急にコンプレックスに感じ始めることがあります。
そのため低年齢の時に治療すべきであったと後悔してしまう患者さんもいます。
将来の精神面を含め、下あごの成長発育を見据えて矯正治療をすべきかどうか考えましょう。
反対咬合は、飲み込む時や話をする際に、舌を前方に突き出す癖が習慣となります。
そのため、飲み込む時に舌で下の前歯を押し出したり、下あごを突き出す癖や、発音障害が出現します。
特に発音障害は、サ行タ行の発音が独特になり、将来の職業、例えば人前でスピーチをしたり、英会話などに影響を及ぼす恐れがあります。

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④反対咬合の矯正治療を開始する時期
反対咬合は、他の歯並びと違い、発音などの機能的な障害はもちろん、下あごの成長発育にも影響があると考えられます。
そのため早期(幼稚園児から学童前期)に治療を開始することが望ましいと考えられています。
しかし、矯正治療を開始する時期は、担当する矯正歯科医により若干の違いがあることがあります。
ここで一番大切なことは、治療の開始する時期を決定してもらうには、矯正治療を専門に開業している矯正歯科医に相談することです。

具体的な治療方法についてはパート2でお知らせいたします。

参考文献:日本臨床矯正歯科医会 神奈川支部


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